はじめに

現代医療と代替医療の狭間でこれまで、お客様から様々なご質問やご相談を受けて参りました。
近年はインターネットの普及により、医師・薬剤師・栄養士、そして私のような健康管理士よりも知識豊富なお客様が多く、私も精進を重ねなければと反省の毎日です。

TVやインターネット上ではありとあらゆる健康情報に溢れ、コンビニや通販等で手軽に購入できる便利さから、もはや国民の10人に8人が健康食品やサプリメントを利用する時代となりました。
一方、玉石混交の情報の中で、戸惑っている方もまだまだ多数いらっしゃいます。

健康増進や病気予防に役立つ情報が浸透し、健康食品やサプリメントが消費されるのは結構なのですが、消費者のほとんどが情報や商品内容を吟味することなく、CMイメージやインターネット上の誇大宣伝に惹かれて購入されていることは、多くの医療関係者や薬剤師の方々はご周知のことかと存じます。

消費者がダイエット目的等で自己責任の範疇で購入するのは厭いませんが、病気治療中や重篤な疾患の患者さんが利用する場合には、薬の禁忌や症状の推移をきちんと説明できる専門家による『対面販売』が重要であると考えます。
2013年6月。三木谷浩史・楽天会長が代表理事を務める新経済連盟(新経連=IT関連企業の経済団体)が、一般用医薬品(第1類)のインターネットでの販売解禁を安倍内閣(政府)に強く求めました。
同年7月に公示される参院選では、物品売買時の対面・書面交付原則の撤廃にを求めるとの事です。

市販薬のネット解禁や売買書面交付撤廃などで、インター市場が拡大されるのは時代の趨勢なのでしょうが、インターネット上の口コミサイトや、勧誘サイトの内情を知らない人がまだ相当いらしゃいます。
そこで健康食品に関する素朴な疑問から、相談員コラム《ブログと同期》を復活することに致しました。
従来のよくある質問「声に応えて」の補足となるものですが、お役に立てれば幸甚です。

KSK直販:担当健康管理士:橋本雅行
KSK健康食品勉強会 発足メンバーの1人
略歴:1958年千葉県生まれ
中学教員・予備校講師を経て
製薬・食品メーカー勤務後
1999年(株)カインドケア設立
2001年KSK直販を統合

KSK直販担当健康管理士:橋本雅行
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自己紹介に代えて

相談員の自己紹介がない、というお叱りがございましたようで・・・
タイトルに自己紹介を掲げるのもおこがましく、特に特筆するような経歴がある訳ではございませんので、以下は私事で恐縮ながら、これにてご斟酌頂ければ幸いです。

私がこの業界に足を踏み入れたきっかけは・・・

新婚間もない従姉妹(癌研究所勤務)が乳癌を発病し、あらゆる最新の治療を受け壮絶な闘病生活の果てに、最後はもう為す術はありませんと、地元の病院に転院し、もう年は越せないだろうと言われました。
男ばかりの兄弟の私にとって、従姉妹は可愛い妹のような存在でした。

諦めきれない叔父は、様々な健康食品を購入しました。
私にも相談があり(当時の私は予備校勤務が本職)にわか知識で、某県の代替医療の病院に再転院させました。民間救急車を利用し生命の保証はできませんよと言われながら、年の暮れの雪の中を搬送しましたが、なんとか桜の季節までは延命いたしました。やがて死期を悟った従姉妹は、自宅に帰ることを切望し自宅で最期を迎えました。

叔父は私には黙っていましたが、従姉妹の死から2年後、高度医療と代替医療の実情を別の従兄弟から聞かされました。 私は叔父家族と、亡くなった従姉妹に対して、申し訳ないことをしたという猛烈な後悔の念と同時に、自分自身の医療や健康食品に対する無知さに言い様のない悔しさが込み上げました。

そんな事がきっかけで、転職してこの業界に入りました。その後多くの方々のご支援もあり、医療と患者さんの仲介役を仕事にと会社を設立し、現在に至ります。

私には常に、現代医療・代替医療の双方に対する疑問を持っています。疑問というよりは、執念かもしれません。しかし、現代医療で助かっている方は大勢おり、同時に代替医療によって救われている方もたくさんいらっしゃいます。

『医食同源』から考えるインターネット情報

2013年6月で55歳となりましたが、40代の10年間はずっと代替医療を学ぶ日々でした。

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フンボルト大学メディカルセンターにて
Humbolt University_02.jpg ドイツのベルリンにあるフンボルト大学は森鴎外が留学した大学として有名ですが、一方鴎外には陸軍の軍医総監としての経歴があります。その鴎外が慈恵医大の創設者である海軍の軍医総監高木兼寛との間で、脚気の原因をめぐって壮絶な「兵食論争」を行い。「脚気は感染症」であるとの主張を譲らなかった鴎外の影響で日露戦争では、陸軍兵士110万人のうち22万人が脚気を患い、27,800人の病死者を出す結果となってしまいました。
一方高木説を採用した海軍は、海軍糧食条例によって兵食改良(麦飯や副食の改善)を行い、海軍兵員の脚気患者をほぼ消滅させました。このフンボルト大学で「医食同源」の講義を受けたことは誠に感慨深いものがありました。

さて、私自身「医食同源」という言葉をなんの抵抗もなく使っていますが、森鴎外や高木兼寛の時代に「医食同源」という言葉はあったでしょうか?答えはNOです。

「医食同源」という言葉は、1972年(昭和47年)、NHKの料理番組『きょうの料理』の特集「40歳からの食事」でにおいて新居裕久医師が使い出したもの。中国の「薬食同源思想」を紹介するとき、薬では化学薬品と誤解されるので、薬を医に変え医食同源を造語したと新居裕久氏本人が述懐 している。
同年の1972年12月に『医食同源 中国三千年の健康秘法』(藤井建著)が出版されているが、これは前出の「医食同源」の語彙を転用したもので、『広辞苑』では第三版には無く、1991年の第四版から収載。

下段の「医食同源」の解説はWikipedia(ウィキペディア)からの引用で、他も色々調べても、どうやらこれが「医食同源」ルーツであることは確からしいのですが・・・。

ウィキペディアは誰でも編集できるフリー百科事典です。多くの人が目にする事項については、記述にたいして「編集」「保護」「削除依頼」などができます。しかし、マイナーな医療・療法・健康食品などは、特定の立場にある人間が書き込めばその立場を優位に説明しているのは自明の理です。

ウィキペディアをはじめ、ネット上の情報を信用してはいけない...とは思いませんが。 目に触れた情報をそのまま鵜呑みにする前に、どういう立場の人が書いた説明なのかを一緒に考える事が大切です。

『EBM』と『NBM』の共存

近年増加している代替医療や統合医療(混合診療)の医院は、癌や難治性疾患の標準治療後に、病院から「もうすべて手は尽くしました」「あとは自宅で療養してください」との宣告を受けた患者さんの受け皿になっていますが、このような医院は、保険診療の認められていない東洋医学やヒーリングやサプリメントを使用する医院が大半であり、このような現状に対して・・・

『EBM』を重要視する側からは(科学的根拠に基づいた診療選択)

(1)個々の臨床医のあやふやな経験や直感に頼りすぎ、非科学的で再現性に乏しい。
(2)食品メーカーと結託した拝金主義であり、患者の適切な治療法を阻害するものである。
(3)経済的に優位な患者優先となり、医療の不平等化を促進している。

との批判的なご意見があります、しかし一方

『NBM』側からの反論は(患者の心理的・精神的を重視した診療選択)

(1)EBMは患者の『数値化』を促し、医療から人間性を奪ってしまう。
(2)EBMは『RTC』から漏れた治療法を排除し、個人差のある治療法を標準化の枠に押し込めている。
(3)EBM自体、そもそも『メタ・アナリシス』において製薬企業の恣意的な評価が可能である。

要約すると、実際に目の前にいる患者を診て、最適な治療法を模索するのは医師としての責務であり、すべてを科学的根拠に基づく治療で対応せよというのは、結果として患者に不利益をもたらしてしまう。という反対意見になります。

それぞれ置かれている立場や経験上で意見が異なり、どちらが正論であるというものではありません。
しかし、現状として後者の立場に立ち、代替医療の医院をサポートさせて頂いている中で率直に意見を申し上げれば、通常医療(現代医療&保険診療)のみで患者ニーズに応えるには限界があり、実際に代替医療のクリニックに患者さんが増えている実情をみておりますので『通常医療+代替医療=統合医療』の潮流はますます加速すると思われます。

今の私は、健康食品の勉強会からご縁やいきさつがあり、代替医療(統合医療)の側の立場におります。しかし、一方のみに偏らないように、バランス感覚だけは見失わないようにと、常に心に留めております。

お詫びとお知らせ

不定期コラム《代替医療と健康食品》は2007年5月で更新が止まり、2009年6月に1度だけ更新しましたが、結局その後、放置をしてしまいました。
ご周知の通り2005年、2009年の改正薬事法により、医療現場や薬局を取り巻く環境が大きくかわり、2013年秋からは抗がん剤治療において混合診療が解禁され、一般医薬品1類のネット販売も解禁となり、さらにTPP参加によって医療環境はダイナミックな変化の時を迎えそうです。

この度、KSK直販の移転とHPリニューアルを機に、実質10年ぶりに再開致します。

2015年11月より、コラムの連載は
『店長日記』として更新いたします。


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